法人設立後に注意すべき点はありますか?

法人の設立登記が終了し、司法書士から謄本(履歴事項全部証明書)を受け取った時点で次の段階に進むことが可能です。この段階ですべきことを下記に列挙しました。

税務関係の届出 税務関係の届出につきましては、会社設立時に必要な提出書類は何ですか?をご確認ください。

社会保険の手続 法人の場合、従業員を雇わずに役員1人に対して役員給与を支払うだけでも社会保険への加入の義務が発生します。

社会保険に加入する際には、年金事務センターに新規適用届、被保険者資格取得届、被扶養者異動届、謄本(履歴事項全部証明書)を提出します。手続き自体はそれほど難しくはありませんが、被保険者資格取得届に給与額を記載しますので、提出前によく保険料負担を検討してから提出する必要があります。

なぜならば、社会保険料の負担は非常に重く(給与の30%程度)、社会保険料の負担によって会社の経営がうまくいかなくなることが多いからです。社会保険料の半額が会社負担となりますので、給与の15%が社会保険料として会社負担になることを加味したうえで給与額を決定しなければなりません。

また、令和6年(2024年)10月からは、従業員数51人以上の企業で働く従業員のうち、下記の4つの条件をすべて満たす人が対象になりますので、その点も事前に確認しておきましょう。週の所定労働時間が20時間以上、月額賃金が8.8万円以上(基本給及び諸手当)、継続して2か月を超える雇用の見込みがある、学生ではない(休学中や夜間学生は加入対象となる)。

従業員数50人以下の法人については、従来通り、原則として週30時間以上勤務する社員・パートさんは社会保険の対象になります。社会保険の負担を避けるためには、勤務時間を少なくし、被保険者とはならないようにする必要があります。

労働保険の手続 仮に週1日数時間の従業員を一人でも雇用した場合には、労災保険への加入が必要になりますので、労働基準監督署に保険関係成立届を提出し、労災保険に加入する必要があります。概算保険料の納付も行います。

また、週20時間以上勤務する労働者を雇用した場合には、雇用保険適用事業所設置届、雇用保険被保険者資格取得届を提出する必要があります。

建設業等の二元適用事業の場合には、通常3つ(現場労災、事務所労災、雇用保険)の労働保険番号を取得します。

許認可申請 建設業等一定の業種については、許認可を得なければ適法に事業を行うことができないことがあります。許認可については行政書士の専門分野になりますので、こちらも早い段階で専門家へ相談しましょう。
融資の申込 自己資金だけで運営できれば必要ありませんが、場合によっては金融機関からの借入が必要な場面もあります。創業時には日本政策金融公庫や地元の信用金庫等に相談し、融資を受けましょう。
預金口座の開設 預金口座の新規開設は年々難しくなっている印象です。法人設立時にはネットバンク、ゆうちょ銀行、地元の信用金庫のいずれかで口座開設するのが一般的です。

審査に落ちて口座開設できない場合も考えて複数の口座に一度に手続きを進めましょう。メガバンク(みずほ銀行、三菱UFJ銀行、三井住友銀行)はハードルが高いため、第1期目の決算が終了し、決算報告書が手元にきた段階でチャレンジするのも一つの方法です。

ネットバンキングは、振込手数料や引出手数料が無料の銀行もありますので、うまく使うことで経費の節約にもなります。

法人名義のクレジットカードの作成 法人名義預金口座の開設を終えたら、法人名義のクレジットカードを作成しましょう。現金払いでは様々な面で効率が悪くなりますので、法人名義のクレジットカードは必須のアイテムになります。

個人名義のクレジットカードを使用し、プライベート兼用にされている場合もありますが、管理面からもあまりお勧めできません。

法人名義のクレジットカードがありますと、マネーフォワード等のクラウドと連携し、カード明細の内容をそのまま会計ソフトに取り込むこともできますので、経理処理時間の短縮、手間の削減につながります。

請求書、領収書等の保管 請求書、領収書等は基本的には7年間手元に保管することが必要です。特に消費税申告について、原則課税を採用している場合には確実に保管が必要です。
役員給与設定 法人設立後一定期間内に役員給与の支払を開始しないと、第1期目の経費に役員給与を計上できないことになりますので、注意が必要です。

例えば、設立後6か月を経過してから役員給与を支払い始めてしまうと、第1期は役員給与を経費に計上できません。早めに適正額を税理士と相談して決め、支払いを開始すべきです。

源泉税の支払い 原則として、給与を支払った月の翌月10日までに源泉所得税を納付する必要があります。

但し、常時使用する従業員数が10人以下の場合には、「納期の特例の承認申請書」を提出することで、年二回(1月20日と7月10日)の納期限となります。承認申請書の提出日の翌月から納期の特例の対象になります。

この記事を書いた人

横浜の会計事務所 田辺税理士事務所

田辺税理士事務所
税理士・社会保険労務士
田辺 悠一 代表

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